「ホワイトペーパーを作ったけど、全然読んでもらえない…」
そんな悩みを抱えるマーケターさんへ。「読まれるホワイトペーパー」の作り方について、実践的なアドバイスを会話形式でご紹介します。7つのポイントを押さえるだけで、ホワイトペーパー制作は大きく変わります。
登場人物
真毛田: 根天津さん、実は困ってるんです。ホワイトペーパーを作ったんですが、全然読んでもらえなくて…
根天津: よくあるお悩みですね。私もコンテンツプランナー兼ライターとして、そういう相談をよく受けます。どんな風に作られました?
真毛田: えーっと、まず競合他社のを参考にして、自社のサービスの特徴をまとめて、導入事例も入れて、あとはトレンドの話題も…
根天津: ちょっと待ってください(笑)。それ、作る前に「誰が読むか」は決めました?
真毛田: 誰が読むか…? いや、まあ、IT担当者とか、経営層とか…
根天津: 「とか」が出た時点でアウトです。真毛田さん、もしかして先にPowerPointを開いちゃいました?
真毛田: …はい。まずは書き始めようと思って。
根天津: それ、ホワイトペーパーに限らず、資料づくりに失敗する典型的なやり方なんですよ。まずはコンテンツ戦略。メモアプリでも手書きでも構いませんので、構想をしっかり固めましょう。
まず聞きたいのは、そもそも「なぜ」ホワイトペーパーが必要だったんですか?
真毛田: 上司から「リード獲得のために作れ」って言われて…
根天津: なるほど。でも「リード獲得」って、手段ですよね?課題を解決するために、あらゆる手段を考える必要があるんです。その先で、獲得したリードにどうなってほしいんですか?
真毛田: うーん…商談につながって、最終的には契約してほしいです。
根天津: じゃあ逆算しましょう。契約する人って、どんな状態の人ですか?
真毛田: 課題を感じていて、解決策を探していて、予算もある人…ですかね?
根天津: その通り。でも今の真毛田さんのホワイトペーパーをダウンロードする人は、そんな「今すぐ客」だと思います?
真毛田: …あ、そうか。まだ課題に気づいてない人や、なんとなく気になってる人の方が多いかも。
根天津: そういうことですね!つまり「誰に、何を届けるか」を最初に決めないと、作っても響かないんです。
真毛田: でも最近、「ペルソナはもういらない」って聞くんですが…
根天津: 確かに賛否ありますね。ただ私はホワイトペーパーみたいに「言葉で届けるコンテンツ」の場合は、あった方がいいと思ってます。
真毛田: なんでですか?
根天津: 真毛田さん、同僚に資料作成を頼むとき、どう依頼します?
真毛田: 「IT担当者向けの資料を作って」みたいな感じですかね…
根天津: で、上がってきた資料が「なんか違う」ってことありません?
真毛田: あります!すごくあります!
根天津: それって、「IT担当者」のイメージが、真毛田さんと同僚で違うからなんですよ。戦略と制作が分かれてると、いつも何か微妙にズレるんですよね。
でも、こう伝えたらどうでしょう?
「入社3年目で、システム導入を任されたけど、上司からはコストを抑えろと言われてる。でも現場からは『使いにくい』ってクレームが来て板挟み。毎日『この選択で本当に大丈夫かな…』って不安になってる田村さん」
真毛田: あー!それならイメージしやすいです。
根天津: でしょ?大事なのは、年齢や肩書きじゃなくて「悩み」と「欲求」なんです。田村さんが今一番欲しいのは何だと思います?
真毛田: えーっと…「この選択で間違いない」って確信がほしいのかな?
根天津: 素晴らしい!じゃあ、そんな田村さんに「弊社のサービスの5つの特徴」を延々と説明したら、読んでもらえると思います?
真毛田: …全然読まないですね。むしろウザいかも。
根天津: そういうことです。田村さんが求めているのは「安心材料」や「判断基準」であって、商品説明じゃない。この違いを明確にするのがペルソナなんです。
真毛田: 理屈は分かるんですが、でも最終的には自社のサービスを知ってもらいたいじゃないですか。
根天津: もちろんです。でも「PRのピラミッド」って知ってます?
真毛田: 知らないです…
根天津: 広報業界では有名なフレームワークなんですが、人が行動を起こすまでに3段階あるんです。
1段階目が「認知」…話題になって存在を知る段階
2段階目が「認識の変化」…見方や考え方が変わる段階
3段階目が「行動の変化」…実際にアクションを起こす段階
真毛田: なるほど…
根天津: で、ホワイトペーパーが一番力を発揮するのは、2段階目の「認識の変化」なんです。さっきの田村さんの例で言うと、「システム選びって、機能じゃなくて運用のしやすさが大事なんだ」って気づいてもらう。
つまり、ホワイトペーパーが一番効果を発揮するのは、「課題は感じてるけど、まだ解決策を具体的に検討してない層」なんです。マーケティング用語で「準顕在層」って言いますが。
真毛田: 準顕在層…
根天津: そう。「今すぐ比較検討したい人」には、カタログや価格表の方が効果的。でも「なんとなく課題は感じてるけど…」って人には、まず「認識を変える」ことから始める必要があるんです。
そこで初めて、真毛田さんの会社の「運用サポートが手厚いサービス」に興味を持つ準備ができるんです。
真毛田: あー!いきなり「うちのサポートは手厚いです」って言っても、「だから何?」って感じですもんね。
根天津: そう!まずは「運用サポートって大事だよね」って認識を変える。もしくは、つくる。その地ならしがあって初めて、商品の話が響くんです。課題解決のための手段として、これが最適解なんですよ。
真毛田: じゃあ、ホワイトペーパーは営業資料じゃなくて…
根天津: 「営業が届きやすくなるための準備」ですね。相手の土俵を作る資料、とも言えるかも。
真毛田: その「認識を変える」って、具体的にはどうやるんですか?特に、まだ課題に気づいてない層に対して。
根天津: いい質問ですね。準顕在層には「物語」と「インサイト」が効くんです。
真毛田: 物語…?
根天津: 例えば、以前こんな事例がありました。組織開発のコンサルタントの方の案件で、自社のノウハウをいくら説明しても全然刺さらなかったんです。
真毛田: あー、よくありそう…
根天津: そこで戦略から見直して、当時話題になっていた「あるスポーツチームの監督のマネジメント法」を切り口にして、組織論を語るホワイトペーパーを企画・制作したんです。
真毛田: おもしろそう!
根天津: 結果、経営層にバンバン刺さって、それまで反応ゼロだった広告からリードが取れるようになりました。
真毛田: なるほど…直接的じゃなくて、興味を引く入り口を作ったってことですね。
根天津: その通り!「エンタメ要素 × 課題解決の視点」なんです。「へぇ、おもしろい」と思って読み始めて、「あ、これって自分の会社にも当てはまるかも」って気づいてもらう。
真毛田: でも、それってちょっと遠回りじゃないですか?
根天津: 真毛田さん、準顕在層の人に「あなたの組織には問題があります!」っていきなり言ったら、どう思われます?
真毛田: …確かに、「何だこいつ」って思われますね。
根天津: でしょ?だから物語の力を借りるんです。スポーツの話として聞いてるうちに、自然と「うちの組織も…」って考え始める。これが準顕在層へのアプローチなんです。
真毛田: 分かってはいるんですが、つい自社のことを詳しく説明したくなっちゃって…
根天津: あー、「説明病」ですね(笑)。これ、マーケターに限らず、自社の商材に自信と愛情がある人ほど陥りやすいんです。
真毛田: 愛情の裏返し…?
根天津: そう。営業の方でも、経営者の方でも、「この商品の良さを分かってもらいたい」って気持ちが強いほど、つい詳しく説明したくなっちゃう。
真毛田: 確かに…愛情があるからこそですよね。
根天津: でも「きちんと伝えたい」って思うほど、自分が話したい順番で、自社が推したいポイントから説明しちゃう。これが実は、一番読まれない原因なんです。
真毛田: まさに私です…
根天津: でも考えてみてください。真毛田さんが友達に映画を勧めるとき、「この映画は製作費○億円で、監督は△△で、主演は…」って説明から始めます?
真毛田: しないです!「超泣けるよ」とか「ラストがヤバい」とか、相手が興味を持ちそうなことから話します。
根天津: そう!まずは「見たい」って気持ちにさせてから、詳細を伝える。ホワイトペーパーも同じなんです。
真毛田: なるほど…「読みたい」って思わせるのが先なんですね。
根天津: その通り。読んでもらえなきゃ、どんなにいい情報も意味がない。だから「説明をやめる」ことから始めましょう。手段として最適だから、私は企画段階から関わって、この視点を徹底してるんです。
真毛田: でも、説明しないで何を書けばいいんですか?
根天津: 「知りたいこと」です。真毛田さんが伝えたいことじゃなくて、読み手が知りたいこと。この順番を逆にするだけで、劇的に変わりますよ。
真毛田: あと、情報がごちゃごちゃになっちゃうんです。言いたいことはたくさんあるんですが、どう整理すれば…
根天津: あー、「情報のレイヤーがバラバラ問題」ですね。これ、文章の世界ではよくある話です。
真毛田: レイヤー…?
根天津: 例えば、真毛田さんが今日一日のことを話すとしますよね。こんな感じだったらどうです?
「昼に会議が入って疲れたし、朝はパンを食べたけどあんまり美味しくなかった。
電車が遅れて会社にギリギリで、夜はカレーだった。
あと、会議が長引いて資料の修正が終わらなかった」
真毛田: なんか…聞いてて疲れますね。
根天津: でしょ?これを時系列で整理したらどうでしょう。
「朝は電車が遅れて焦ったけど、なんとか間に合った。
昼は急な会議でぐったり、資料の修正も間に合わずバタバタ。
夜はカレーを食べて、少しだけ落ち着いた」
真毛田: あ、すごく分かりやすくなった!
根天津: これが「情報のレイヤーを揃える」ってことです。時系列、重要度、カテゴリー…何でもいいんですが、一つの軸で整理する。これも企画段階から考えておかないと、後から直すのが大変なんです。
真毛田: ホワイトペーパーだと、どう応用すればいいですか?
根天津: 例えば「背景→課題→解決策→具体例」の順番を徹底するとか。あっちこっち飛ばないで、一つのレイヤーで語り切ってから次に行く。
真毛田: なるほど…確かに私の資料、途中で事例の話が出てきたり、また課題の話に戻ったりしてます。
根天津: そういうことです。読み手の頭の中に、きれいに情報が積み重なっていくイメージを持って構成してみてください。
真毛田: いろいろ教えてもらったんですが、結局のところ、何が一番大切なんでしょうか?
根天津: 一言で言うなら「視点」ですね。
真毛田: 視点…?
根天津: 作る時の立ち位置です。「自分たちが伝えたいこと」の視点で作るか、「読み手が知りたいこと」の視点で作るか。この違いがすべてを決めます。
真毛田: 具体的には?
根天津: 作業中に、常にこの3つを自問してください。
「読み手は何に悩んでいるか?」
「今どんな情報を求めているか?」
「その人にとって、これは読む価値がある資料か?」
真毛田: この質問を持ちながら作ると…
根天津: 構成も、書き方も、自然と変わってきます。タイトルの付け方から、情報の並べ方まで、すべてが変わる。だからこそ、私は戦略から制作まで一貫してやる必要があると思ってるんです。
真毛田: なるほど…技術的なことより、根本的な姿勢の問題なんですね。
根天津: その通り!デザインを工夫したり、キーワードを散りばめたりする前に、まずは「相手本位」になれるかどうか。これができれば、ダウンロード率は必ず上がります。
真毛田: 相手本位…覚えておきます。
根天津: 最後にもう一度。ホワイトペーパーは「伝えたいこと」じゃなくて「知りたいこと」。この視点の転換が、すべての出発点ですよ。
真毛田: ありがとうございました!早速、作り直してみます!
根天津: 今回の相談を通して、一つだけ覚えておいてほしいことがあります。
ホワイトペーパーで成果を出すには、情報量や表現技術よりも、「誰に・何を・どう届けるか」という設計思想がすべてなんです。
多くの人が陥る「説明したい病」から抜け出して、「相手が知りたいことに応える」姿勢に変われるかどうか。
これが、DL率を変える最も本質的なポイントです。
技術的なテクニックは後からついてきます。まずは「読み手本位」の視点を身につけることから始めてみてください。